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胸痛、動悸、息苦しさで受診される患者様へ

「胸痛」の症状でクリニックを受診される方は多いのですが、心臓や大血管、肺や消化管といった臓器に明らかな疾は認められない方も少なくありません。特に、40歳未満の比較的若い方には、胸痛を訴えられるものの、特定の臓器に疾患が認められないケースも少なくありません。

胸痛を起こす病気としては、まず、狭心症や心筋梗塞といった心臓の血管の病気、大動脈解離などの胸部の太い血管の病気があります。
また、胸痛を起こす肺の病気としては、肺の一部が破れて空気が胸腔内に漏れだす気胸や、肺の血管が血栓でつまる肺血栓塞栓症などがあります。
さらに、食道や胃や十二指腸の潰瘍、炎症や、胆石症といった消化器の病気によって胸部が痛む症状が起こることもありえます。
胸痛の症状を訴える方には、まずこれらの病気であるかどうかを診断する必要があります。

まず、病歴や既往歴等の詳細な問診を行いますが、狭心症などの心臓の血管の病気はこれだけで診断がつくことも少なくありません。

また、心電図や胸部X線撮影でこれらの病気であるかどうかを診断することもあります。また、長時間心電図や超音波エコーの検査でより詳しい検査を行った方がよいと考えられる場合もあり、さらには、胸部CT(冠動脈の造影CTも含む)、上部消化管内視鏡(胃カメラの検査)が適応になる可能性もあります。
最終的には心臓血管カテーテル検査による心臓や血管の造影等の検査の適応になることもあります。
(心臓カテーテル検査や胃カメラの検査を除けば、基本的に痛い検査や苦しい検査はありません。)

これらで明らかになった病気があれば、その治療を行うことになります。

これらで、特に病気が明らかにならなかった場合には、神経痛や筋肉痛も考えなければなりません。肋骨と肋骨の間の肋間神経に痛みが起こる肋間神経痛や、胸部の筋肉の筋肉痛である場合もありえます。

また、神経痛については、心臓の血管は自律神経(交感神経や副交感神経)も支配しているため、神経症による自律神経失調をきたしやすく、心因的な要素、不安、抑うつ、不規則な生活習慣、職場におけるストレス、などさまざまな要因で胸部の神経痛をきたす可能性があります。このような場合は、「心臓神経症」といわれます。
「心臓神経症」では、胸痛のほか、動悸、息切れ、呼吸困難感といった症状がみられることもあります。
これらは、自律神経症状として起こる他、不安が強く不安の発作として起こることもあります。

症状を軽減するためには、神経症の原因となる自律神経失調をきたさないように、心理・精神的な要因の改善、生活習慣の改善(規則的でバランスのとれた食事や運動)、日常生活におけるストレスの回避、といったことが必要になります。
歩行などの適度な運動療法が効果的である場合もあります。
動悸・頻脈などの自律神経症状が高度な場合には、脈を抑える薬が有効である場合もあります。
不安の症状が強いときには、不安を抑える薬が投与されることもあります。

このように、胸部に痛みを感じられた場合でも、直ちに生命の危険のある心臓などの病気ではない場合も少なくありませんが社会生活に支障をきたす場合もあり、診察の結果、種々の検査をしたほうがよいと判断される場合もありますので、まずは一度受診をされて下さい。